東京高等裁判所 昭和35年(ラ)217号 決定 1960年6月29日
抗告人 杉山与三郎
主文
本件抗告はいずれも却下する。
理由
一、本件抗告の趣旨ならびに理由は、別紙のとおりである。
二、まず、昭和三五年二月二六日付の回付決定について考えるに、支部設置規則には支部の管轄区域が定められているが、支部は本庁と一体をなすものであるから、右は法律上の管轄ではなく裁判所内部における事務分配の基準を示すものにすぎないものというべきである。したがつて、回付は事実上のもので訴訟事件の移送ではなく、また回付の決定に対して抗告を認める規定もない。
なお、抗告人は昭和三五年三月二三日午前一〇時の口頭弁論期日の取消決定も取り消されるべき旨主張するが、期日の指定は訴訟指揮上の裁判であるから、必要と認めるときは何時でもみずから取り消すことができるのであつて、また、その取消決定に対して抗告を認める規定もない。
したがつて抗告人の本件抗告はいずれも不適法であるから却下すべきである。
よつて主文のとおり決定する。
(裁判官 角村克己 菊池庚子三 吉田良正)
抗告の趣旨
原決定(回付並に口頭弁論期日取消決定)を取消し更に相当なる御決定を求むる。
抗告の理由
一、抗告人は前記離婚等事件につき昭和三四年八月四日水戸地方裁判所下妻支部に訴を提起した支部は昭和三四年(タ)第四号離婚等事件として審理中本訴を御庁に独立して離婚等事件として提起したるもので一の離婚事件(下妻支部事件)繋属中本訴を土浦支部に提起することは不適法であるから却下すべきである。(大正九年(オ)第八八三号同一〇、二、二八日大審院民事一部判決、民録二七輯二三七頁参照)
二、抗告人は本訴離婚等事件については昭和三五年二月一二日第一回口頭弁論期日前に管轄違いの抗弁を人訴法第一条により提出し争いたるに相手方は承服せず抗告人は已むなく抗告人の現住証明書を添付上申したる次第であつて仮りに管轄につき民訴第三〇条の準用を為すと雖も同条の但書により人訴法上移送決定を為し得ざるものと解すべきである。
原決定は「回付」と称し移送と別異の如きも其の実質的効力は同種のものと解せらるゝが故に該決定は何れも取消すべきもので更に相当なる裁判をなすべきである。